黒川雅之氏 トークイベント開催いたしました
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Masayuki Kurokawa TALK SHOW
DHAL HOMES

黒川雅之氏 トークイベント開催いたしました

2024.2.6

デザインについて学び、考える時間。
稀有の建築家・デザイナー 黒川雅之の思想に触れる濃厚な2時間。

先日1月28日(日)、Masayuki Kurokawa Movingshopに連動し、黒川雅之さんご本人によるトークイベントを開催いたしました。立見の方もいらっしゃる大盛況の中、イベントがスタート。
Dhalデザイナー水谷美知も交えて、どんな会話がなされたのか、会場の雰囲気、当日の様子をお届けしたいと思います。

まずは黒川さんのレクチャーからスタート。「思想以前」「新作」「思想の原点」という3つのテーマで展開されました。
デザインを語る上で、思想以前にある ものの捉え方、意識と存在。そして、自身のブランド「HERE」のことや新作の家具のご紹介など、様々なエピソードや背景を掘り下げながら、デザインについてのお話しをいただきました。
Dhalの水谷との対談では、ものづくりをする者として、ものと人のと距離についての質問がありました。黒川さんによる熱のこもったお言葉に、会場も次第に引き込まれ、熱を帯びていきます。
以下、印象的だったのシーンをいくつかお届けします。





---〈水谷〉一番お聞きしたかったのは、人とものとの関係性。デザインをする上で、どういう関係性をとっていくのか。
何かそういうことっていうのは、それぞれのデザイナーさんによって違いがあると思うんですが、黒川さんはこうでありたいみたいな間のとり方はありますか?


〈黒川〉根本的なものっていうのがあって、それをまずお話した方がいいと思うんですけど…。日本でヨーロッパやアメリカから来たのでしょうか、知という概念がありますね。知識とか、ナレッジとかを意味する知ですね。(中略)
知という概念は何か。知っているとか、知るための様々な姿勢っていうのを評価する、大事にするっていうのがありますよね。知をどうするかっていうことは、いろんな企業も考えてるし、政府も考えてる。だけど、本当はね、ソクラテスが言ってるんですが「無知の知」っていう言い方をしてましてね。
”知らない”っていうことがどういう価値があるかっていうことを、言ってるように思うんです。昔ながらのソクラテスの話なんていうのは、弟子であるプラトンが書いたものじゃないとかね。人が後で記憶にたどって伝えているしかないので、詳しいことは誰もわからないまま語ってるんですけれども、無知の知というのは、ある人は未知の認識っていう言い方をするんですね。私何も知らないっていうことを知ってる人が一番優れてるし、いろんなこと知ってる。何でも私知ってるって思ってるやつは本当は馬鹿だと。
(中略)知に対するアンチテーゼって何かっていうと混沌なんですよ。混沌ってなんか、くちゃくちゃにあらゆるものが混ざってしまってですね。それで真っ黒か真っ白か、どっちかになってしまっていて。
それは、「私はあなたには負けます」と。要するに「人間はすごいんだぞ、知の生き物だぞ」っていうんじゃなくて「もう私は無力です。」って言って、負けを表明することから始まる人生の方がずっとすごいんじゃないかっていう僕の思いなんですよ。だから物についても、物を支配する感覚ではなくて、最初から負けていることが大事だっていう。

(中略)実は全てのものは無力だと思っておく、人間ってのはもう駄目だと。何も勝てない、無力な人間だっていう、そのことを深く理解して作ることが大事。
どうしてかって言うと、そうすると、謙虚になるんですよ。今の人間、何が近代の間違いかって、人間が不遜でしょ。人間が一番だと思って環境を壊したり、いろいろ平気でしているじゃないですか。人間って本当は駄目だと思う。
そういうことによって、もっと謙虚になってね、謙虚にものを作られるようになる。


---〈水谷〉一番初めに黒川さんが作られたものを見たのがドマーニという照明で。感銘を受けててしまって、これを作る方も、きっとユニークなんだろうなって最初に思って。素材の組み合わせにも驚きましたし、あの明るさのちょうどよさというか全てにおいてもう素晴らしいなと思ったんです。あれを作られるまでって覚えてらっしゃいますか?

〈黒川〉ええ、もちろん。あれはガラスとゴムでできてるんですよ。ゴムという素材と出会ったのは、大学院生マスターコースの頃ですけど、ゴムはバイクに内蔵されたショックアブソーバーに使うんですよ。 オイルの中にゴムが浸ってね、そしてものすごい土地をライダーがばあっと走るでしょ、そうすると、振動を伝えないように中の部分が、ねじれながらエネルギーを吸収してるわけですよ。
僕はそのものの人格になっちゃうっていう癖があって、ゴムになっちゃうんですよ。
すごい!!こいつすごい…って尊敬するわけです。それからゴムっていうものに興味を持って、いろいろ調べてゴム屋さんで人間関係作ったりして、どんどんいろんなものを作ったりしてきてるわけですけれど。
素材って、それぞれがすごい強い言葉を持っていて、ここに存在することが信じられないすごいことなんです。
(目の前のMacBookを指しながら)これもアルミニウムでしょ?このコンピュータ。アルミニウムを板として曲げて作るっていう段階が最初にありましたけど、これそうじゃないんですよ。 アルミの厚い塊から、ルーターで削ってるんですよ。(中略) Appleがなぜすごくなっちゃったのかはその瞬間からなんですね。
だからデザイナーって、ものを作るわけですから必ず素材と会話するわけでしょ。大工はカンナで木と会話したわけですよね。直接作らないけれども、疑似的な体験をするわけだよね。
板からプレスして作るんじゃ、そりゃバカっとなりますけど、こういうふうにルーターで立体から削り出して作ってるんだと、そりゃ強靭になる。他のコンピュータのメーカーとは全然違う世界を作り上げたのが、背後にそういう素材への思いと技術の発見にあるんですよね。
それが製造化のコスト的に普通はそんなことして高くって駄目だって結論出すのを出さないで、真剣に頑張って考えて実現させちゃったんですよね。これがAppleのすごいところ。例えばAppleを僕がなぜ好きだっていう中に、デザインがいいからだとかソフトウェアがいいとかそういう話だけじゃなくて、Appleを作り上げていく熱い思い、彼らの熱い思いに共感してるわけですよね。
これを買うことで、お前好きだって僕はAppleの連中にメッセージを送るってわけでしょ? だからダルホームズでね、買い物してくださるお客さんもね、買うっていうのはただ便利だから買うというだけじゃなくて、これいいよ!と。賛成票一つ投じたってことですよね。
MovingShop店内の風景


貴重な機会をいただきました黒川雅之さんはじめ、HEREの皆様、本当にありがとうございました。そして会場にお越しの皆様、この度は足を運んでいただきありがとうございました。

トークの最後には、「これいいよ」ってクリックするくらいの気持ちで買ってやってください、と笑う黒川さん。 買い物はラブコール。世界中のどこかに好きな人がいてくれればいい。だから自分が作りたいと思うものを妥協なく作る。黒川さんのそんな熱い思いに共感し、トーク後の店内はこれまでないほどに高揚感に満ちていました。

Masayuki Kurokawa Movingshopは残すところ後1週間。2月12日(月祝)まで開催中です。
黒川雅之さんが生涯かけて生み出している様々な素材のプロダクト。その思想に触れ、素直な感覚で惹かれるものとの出会いがあればいいなと願っております。



■黒川雅之 Masayuki Kurokawa

建築家、プロダクトデザイナー
1937年名古屋市生まれ。61年名古屋工業大学建築学科卒業、67年早稲田大学大学院理工学研究科建築工学博士課程修了、同年、黒川雅之建築設計事務所/株式会社K&K(2012年改称)設立。株式会社デザイントープ代表取締役 物学研究会代表。2010年金沢美術工芸大学にて芸術博士取得。天津大学名誉教授、大連工業大学客員教授。プロダクト・インテリア・建築にとどまらず文筆家としても活躍中。
・近著
2021年 「八つの日本の美意識(改定版)」(デザイントープ) Kindle版 2017年 「野生の衝動」(デザイントープ) 2017年 「DESIGN PARADOX / デザインの逆説」(デザイントープ) 2018年 「椅子と身体 椅子とは何か?」(デザイントープ)
IG:eatalk_here



■水谷 美知 Michi Mizutani

通算18年のセレクトショップでの経験を経て2008年よりCOMMONOreproductsで企画生産管理に携わる。地場産業を活かし地元の職人たちと密に、繊維の街ならではのものづくりを10年継続しブランドを終える。2018年8月に開業し自身のブランドDhalを立ち上げる。同時に旗艦店として名古屋市東大曽根町にお店をオープンする。時間をかけないとできないもの作り、ダイレクトに作り手の考えを伝えることに重きを置くことによって可能になる生産と販売を目指し、ブランドを運営している。2021年9月にデザインと生活雑貨に重きを置くDhal Homesを名古屋市西区天塚町にオープン。
IG:dhal_column


Photo :Kana Kurata
IG:930_skn

Dhal Homes

私たちはデザインが日々の生活と人間との間を取り持つと考えます。世の中は進化し続け、一方で人間は進化に対応できることもあれば、できないこともあり、できてもしたくないこともある。Dhal Homesは、それらの問題を捉えて、衣食住の適切な関係を構築します。

IG:dhal_homes

 

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