2025SS立ち上がりを迎えるDhalデザイナー・水谷美知へのインタビュー

水谷 美知
通算18年のセレクトショップでの経験を経て2008年よりCOMMONO reproductsで企画生産管理に携わる。地場産業を活かし地元の職人たちと密に、繊維の街ならではのものづくりを10年継続しブランドを終える。2018年8月に開業し自身のブランドDhalを立ち上げる。同時に旗艦店として名古屋市東大曽根町にお店をオープンする。時間をかけないとできないもの作り、ダイレクトに作り手の考えを伝えることに重きを置くことによって可能になる生産と販売を目指し、ブランドを運営している。2021年9月にデザインと生活雑貨に重きを置くDhal Homesを名古屋市西区天塚町にオープン。
IG:dhal_column
__水谷さん、半年に一度の人気企画です。今回もよろしくお願いします。早速ですが、2025年春夏シーズンはどのようなイメージを感じていらっしゃいますか。
25SSを作り始めた1年弱前ぐらいから、なんとなく世の中が良くなるような予感がしていて。しんどいところから飛び出して、「もういいよね」と世の中がなっているように思って、その変化の時にどうしてもタマムシをやりたかったというのがあります。A地点からB地点に行く時の、AでもBでもない、移り変わりの中で奥に潜んでいる明るい未来みたいなイメージ。そんなふうに世の中が変わっていくといいなと思って、タマムシを作りました。タマムシって、2つの違う色の糸がタテヨコで合わさって表面の色になっていて。外側に見えている色は、実は異なる色が交わることによってできている。今見ている世界の先にある、明るい未来が実はもう見えているんじゃないかな。そんな世の中の空気感に、タマムシがぴったりだと思って。

__今季打ち出したかったことを教えてください。
ここ最近、多様化という言葉をすごく耳にしていて。いろんなことに対応できて、いろんな考え方がある中で様々なことが「あり」とされてきたんだけれど、そうなってしまったからこそ不自由に感じている人がいるんじゃないかなと思っていたりして。自由であるために、各々が持っておかなくてはいけない自分の考えが半分と周りを許容できる力が半分必要なんじゃないかなと思っているのです。そういう考えがもう少し強く出せたらいいなと思って、今シーズンは自分が好きな70年代の空気を出したいと思って作りました。
__フジエテキスタイルさんとのコラボレーションで選んだ生地も、1976年にデザインが発表されたとのことですね。
そうそう、私も1976年生まれなの。自分が生まれたばかりの時って何もわからないから、すごく興味が湧くというか。どんな時代に生まれ落ちたのかなっていう興味があって。
__今回のコレクションのデザインに、70年代の服のデザインが反映されているということもあるのでしょうか。
基本的には、生地をどう形にしようかという話をパタンナーさんとするので、デザイン画を描きますが、形を作る上で細かく指示はしないようにしています。自分の作りたい気持ちと、作ってもらう方達とで想像の可能性を広げたいなと思っています。今シーズンでいうと、なるべく70年代のイメージの話とか、音楽とか、そこと敢えてミスマッチするものって何だろうという話をして形にしてもらっています。ある服と全く同じものを自分が作る必要はないから、生地とのバランスを考えて、パタンナーさんに相談して作っています。今と、70年代と、その先の時代を想像したものをくっつけるイメージ。自分が本当に好きなものって想像を超えてくるもので、古着とかもすごく好きだけど、本当に格好いいと感じるものをコピーして作るとなったら、それを超えることは絶対にできない。それを超えるには、一度体の中に取り込んで、忘れて、また作る。そういうやり方なのではないかなと思っています。
__今季のコレクションの中で、水谷さんの経験の中で生地のインスピレーションとなったものはありますか。
今季はないかなぁ。今季も、かな。でも、軽い生地を作りたいなという思いがあって、風が抜けるような感じにしました。軽やかに服にチャレンジしてもらいたいなと思って。

__デザインをしながらもお店に立つこともある水谷さんにとって、お店とはどのような存在なのでしょうか。
個人的には緊張する場所であり、この上ない幸せを味わえる場所です。何かに媚びて作った服ではないので、お客様の反応がダイレクトに返ってくる瞬間に足を踏み入れるのは、すごくドキドキする。だからこそ、Dhalの服を手に取って喜んでくれている姿を見ると、ご褒美をもらえたような気持ちになります。少し話はズレますが、バイヤー時代、好きなデザイナーさんの展示会で、次のコレクションの服を見て毎回感動していました。自分がしっかり買い付けするから、デザイナーさんには思いっきり自由に作って欲しいという思いがあって。私がこのデザイナーさんを食わせてやる!ぐらいに思っていました、笑。だからそんな熱い思いを持った店員さんのエネルギーと、その挑戦状に受けて立ってやるぞ!っていうお客さんがいる。ヒリヒリした場所であって欲しいなという感じもありますね。
__Dhalの今後の展望についてお聞かせください。
待っていました!いつも先のことはわかりませんとお伝えしていましたが、今回も聞かれると思って少し準備してきました。洋服を作り出すことも好きだけれど、それよりも、着てくれる人の役に立てていれば本望だなと思っています。極端な話、服でなくても良かったのかも。たまたま私は服が好きで、誰かに喜んでもらうためのものが洋服だったのだなと思います。Dhalの服を着て街を楽しく歩いてくれたり、日々の癒しにしてくれたり、仕事のモチベーションにしてくれたり。これを着たら素敵な1日になる、と思ってもらえることが、Dhalを続ける理由かな。だから今回の答えは、もう少し服作れるかな、作らせてもらえるかな、という気持ちです。
__最後に、最近のマイブームを教えてください。
マイブーム…えっと、何だろう。あっ、そうだ!インディアンジュエリーです。年始にニューデコレイトという企画展を開催したのですが、やっぱりインディアンジュエリーがあるとファッションを楽しめるなと思って。今つけているのもヴィンテージのものなのだけれど、ターコイズに綺麗なブルーのビーズを合わせているのが面白くて。この時代にもそういう感覚の人がいたんだなぁって。これからも楽しんでいきたいです。あ、あと、星まわりを見てもらうことかな。

__ありがとうございます。今後のDhalに期待しています。

Dhal Homes
私たちはデザインが日々の生活と人間との間を取り持つと考えます。世の中は進化し続け、一方で人間は進化に対応できることもあれば、できないこともあり、できてもしたくないこともある。Dhal Homesは、それらの問題を捉えて、衣食住の適切な関係を構築します。
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