偏愛的・ローカルシティガイド
Interview
Where Passion Meets Local
DHAL DESIGN SHOP

偏愛的・ローカルシティガイド

2025.7.15
取材日
2025年07月12日(土曜日)

「おすすめの面白いお店」と聞くと、どうしても似たような顔ぶれが並びがち。けれど、街をよくよく見渡せば、もっと静かに、もっと深く、店主の“好き”という熱量がにじみ出た場所が存在します。そんな人やそれにまつわる場所を、しがらみ抜きにして紹介していくのが、この偏愛的ローカルシティガイド。類は友を呼ぶというけれど、その独特なスタンスの向こうに、今どのような風景が見えているのか?カジュアルなインタビュー形式でコミュニケーションする不定期企画。

その人ならではの“好き”がにじみ出た場所って、やっぱり面白い!!

 

「DHAL DESIGN SHOP」

 

約1ヶ月にわたる内装工事を経て、店名とコンセプトを一新した「DHAL DESIGN SHOP」がリニューアルオープン。約4年間にわたり展開してきた「Dhal Homes」としてのあり方に一区切りをつけ、新たなスタートを切りました。なぜ今、このタイミングでショップのコンセプトから見直し、新しい名前と空間での展開を選んだのか?デザイナーでありディレクターでもある水谷さんに、その背景や想いについてお話を伺いました。

 

SottsassとSuperstudioによる1973年のエキシビジョンポスター。ドイツの古いキャビネットと整備調整済みで販売されるB&OのBeosound Century。

 

--- お忙しいところ突然の取材オファーを受けて頂き、ありがとうございます。熱量モンスターの方々に今の現在地についてお話を聞くという企画です(笑)。

皆様に新しいお店を深く知って頂けるのであれば喜んで!!

--- 先にショップコンセプトそのものを伝えて頂いた方が、話がわかりやすい気がしますね。お願いできますか?

DHAL DESIGN SHOP -- Concept

DHAL DESIGN SHOPは、“楽しさを体験することで生まれる精神的な価値”を大切にします。目に見えるデザインと、目には見えない感性。その両方を尊重しながら、暮らしの中にある純粋な素材や感情を丁寧に拾い上げて、発想と工夫に満ちた選定を行います。現代を生きる私たちにとって、「創造的であること」と「幸福であること」は、ときに矛盾し、ときに響き合うテーマです。創造には、不安や努力が伴うもの。しかし、人は本来、生まれながらにして創造する存在です。

だからこそ、私たちはデザインが日々の生活と人間との間を取り持つと考えます。暮らしの中にある小さなひらめきや、モノを選ぶ楽しさ、空間を創るよろこび。そこに、ほんの少しの芸術と自由を添えて。DHAL DESIGN SHOPでは、それらの問題を捉えて、心と身体が調和する暮らしを再構築します。

あなたらしい“心地よい創造”が、ここから始まります。

 



アーティスト物など海外からのフレッシュなピックアップもちらほら。DHALの手の込んだキルトも同じ目線でフラットに展開。

 

--- では早速。4年続けられてきたDhal Homes、手応えはどうでした?

手応えはいつも感じています、笑。良くも悪くも。オープンは2020年10月16日でした。まだ1店舗目(東区大曽根)のお店に自分がフルで立って回している状況で、もう1店舗を出すなんて想像もしなかった中、2019年に社会情勢が大きく変わり、今だからこそできること全てやらなきゃ!の一心でした。その時は、みんなの励みになることや癒しになることを、特に住むこと食べることに焦点を当てていたのかなと振り返ると思います。ざっくりですが、生きる場所を作りたかったんだと思います。

--- 当時の水谷さんは猪突猛進感が凄かった印象です。その経緯の中で生まれた、心境の変化を教えて下さい。

とっても繊細に色んな感情が入り乱れました。とっても複雑な時間でした。破壊されてしまったあの頃を再構築したい、もう一回崩れた積み木の土台を綺麗に積み上げていきたい。もう終わりにしたいけど投げ出したくない。美しいものを見ていただきたい。そしたらみんなの心に希望や光が届くんじゃないかって思ってました。でも違いました。二度とその時には戻れない。だから今を生きなきゃな今を大切にしなきゃなって思えました。

 



今回、閉塞感のあるドア式のフィッティングルームを廃止し、違和感のあるエレガントなゴールドのカーテンを採用。安心、安全、快適より、その瞬間の高揚感にフォーカスした仕様に。

 

--- そして、店名とコンセプトを一新した「DHAL DESIGN SHOP」が爆誕!!したわけですね。そもそも、なぜこのタイミングで、新しい打ち出しをしようと考えたのですか?

もともと性分として飽き性。変化を日常の片隅に置いておきたい、ちっちゃな奇跡を毎日起こせていたら、ひょっとしたら気づいた時には自分で自分の変化に驚けて 2倍楽しい、みたいなところがあります。なぜこのタイミングで、、、このタイミングだったからとしか言いようがないかもしれません。そう思っちゃったから、ですかね。いつかやるかもしれないし、もう一生やることもないかもしれない。全てのことに関して感じたことをカタチにすることはそう大して大それたことではないとも思っています。後からなんとかしようと思うお馬鹿なので。

--- はははっ。お馬鹿ではないと思いますよ(笑)。シンプルに新店のコンセプト、こだわりについて教えて下さい。

上記のコンセプト通りと言いますか。ニュートラルに受け取って頂けるとすごく嬉しく思います。少しだけ話を広げると、Dhal Homesという店名は、住まいや暮らしを強く連想させるお店の名前でした。Homes(家)は安心、安全、快適みたいな。コンセプトにもありますが、クリエイティブ(創造的)に生きることって、時に安全地帯から出て、周りを見渡して、あっちかな?こっちかな?って冒険することだと思うんです。それは危険やリスクが伴うし、体力も気力も必要だけど、あの山の向こうに素晴らしい景色があるのでは?というワクワクな気持ちを大事にしたいなと。

 



店内には書籍も充実。少し引いて全体を見てもらえれば、何となく意図が伝わるのでは?という構成。Alessi/Sottsassも発見。

 

--- Beuysのフェルトのポストカードをコースターに見立てて、ディスプレイするなんて斬新すぎる!!品揃えはどのような基準で商品を選ばれているのですか?

アートにおいても生活雑貨においても前衛思想を持った挑戦的なものづくり、明るい未来に一石投じているような作り手の物を取り扱っています。自身にも社会にも問いかけのあるもの。また、アーティストさんが作る作品も、デザイナーさんが作るプロダクトも、フラットな目線で取り扱っています。それぞれの良さを最大限お伝えできればなと。

--- スタッフさん含め、店内から沸々とした熱気を感じますね、今回から始まった新しい取り組みは?

今回から、物、デザインにフォーカスしています。そうすることによってデザインというものを一緒に考え、話し合えることができ、デザインとは人と物との間を取り持つものという事がリアルにあればいいなと考えています。やはり店頭での充実したコミュニケーションや行きつけのお店があるという特別感は今後もお店としての価値に繋がっていくと思います。

 



LAのデザインスタジオ、WAKAWAKAの家具も常設。水谷さんらしいユーモア溢れるディスプレイが楽しい店内。

 

--- ありがとうございます。少し話が変わりますが、最近の名古屋のシーンをどのように感じていらっしゃいますか?水谷さん的にどんな動きが気になる?

元々、名古屋は保守的でコンサバティブな街だと感じていました。ブランド品の売れ行きが全国でも特に高いと言われてきたのも、そうした気質の表れかもしれません。そして近年、その傾向がさらに強まっているように思います。多くの人が「安心」や「安定」をより求めるようになっているのではないでしょうか。ただ私は、そうした価値観が人の成長を妨げることもあるのではと感じています。本来、「安心」や「安定」は誰かから与えられるものではなく、自らの手で築いていくものだと思うのです。そして、つくる側に立って初めて、本当の安心や安定を得られるのではないでしょうか。すべての人が、少しずつでも「創る」側にまわることを願っています。たとえば、自分の生活を少し変えてみる、自分の考え方を自分なりに組み立ててみる――そうした小さな変化の積み重ねの先に、きっと静かな安らぎがあると信じています。

--- 今後、DHAL DESIGN SHOPとしてやってみたいことがあれば教えてください

この先やりたいことはたくさんありますが、何事も階段の一段二段飛ばしはできないと思っています。今は今起こしたことをしっかり見届けながら、どの引き出しを出していくかそれに集中したいと思います。小さな奇跡をお店と共に来てくださる方と一緒に起こしていきたいなと思っています。

 



湯浅景子のファッショナブルな立体作品が壁一面に。キムホノの器やSTUDIO PREPAのガラス作品もさらに充実。アーティスト物とデザイン物の共鳴関係が絶妙です。

 

DHAL DESIGN SHOP

〒451-0021 愛知県名古屋市西区天塚町1-108-1
電話 : 052-522-3557
取り扱い : キムホノ | STUDIO PREPA | 盛永 省治 | 黒川 雅之 | 若林 幸恵 | 古川 桜 | 竹内友 有生 | ALESSI | 1616/arita japan | Edward Wohl | F/style | 工房イフウ | さささ | SOURCE objects | TG | TAKT | WAKAWAKA | IKO IKO | Dhal | Little Apothecary | Hachi tea | Imported Items | Vintage Items
IG : dhal_designshop

--- おまけ。最近の水谷さんのマイブーム。

① 友人の勧めで詩を読んでいます。萩原朔太郎さんのものです。難しいと敬遠していましたが、詩にも音楽が流れているんだと感じれて面白いです。「月に吠える」情景が広がって想像力が鍛えられます。

② 体内発酵。そんな言葉があるかどうかもわかりませんが、笑。これは体内を想像して自分の体温で何と何をどう食べたらうまく発酵させれるのかを楽しんでいます。情報に頼れば早いのかもしれませんが、自分に合うものを自分で考えて探す。今の気分と体調を毎日ボディスキャンしています。実験が面白いです。時々とんでもなくお腹を壊すこともありますので、自己責任で、笑。

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UNEVEN HUB STORE / Nagoya

「想像を超える、人とモノのハブ体験」をテーマに、広々としたワンフロア(230坪/760㎡)を展開。周回可能な放射状レイアウトにて構成された小規模ショッピングモールのような発信拠点です。愛知県名古屋市西区天塚町という穏やかなロケーションにて、ファッションのセレクトショップ「UNEVEN HUB STORE」を起点とし、デザインと生活を取り扱う「DHAL DESIGN SHOP」、スペシャリティーコーヒーと焼き菓子を提供する「awai」、コンテンポラリーなレディースファッションを取り扱う「LILLT」、大小二つのイベントスペースとキッチンスペースを集約。多種多様な人やモノ、コンテンツが重なり合い、刺激し合うことで、想像を超えた体験を提供いたします。

IG:uneven_hub_store


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